ユーザーの声の裏に潜む潜在的なニーズをリーンにつかんでいく

こんにちは。Kaizen Platformで新規プロダクトを開発しているチームにいる、kosukeです。

Kaizen Platformでは主にプロダクト開発のメンバーが中心となり、お昼に皆でお弁当を食べながら代表者が技術ネタや社内のプロダクト作りに関する話をする会を毎週やっています。 先日、私の方からアンケートやフィールド調査の話題と共にどうやってユーザーリサーチしていくか?的な話をしたので、ここではその話をご紹介したいと思います。

ユーザーの声 VS 本音や裏に潜む声

ここに面白い話があります。大分昔の話ですが、ソニーのラジカセ(↓)が発売される前後、本体の色のニーズを探る調査が行われたそうです。会場には数十人が集められ、複数の色のモデルが用意された中でどの色が良いかを質問されました。

すると、会場の人々の声からは黄色のモデルが人気があったそうです。

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そして最後に、会場にいた全員に特別にプレゼントされることになりました。好きな色のモデルを持ち帰ってよいと言われ、帰り際に皆が手にとって帰ります。すると、何故か会場での声からは人気があった黄色のモデルではなく、黒色のモデルを皆手にとって会場を後にしていったそうです。実際にユーザーの声としては黄色のモデルが人気だったのにも関わらず、所有者としての立場ではより無難な黒色が選ばれたということです。

表面には出てこない潜在的ニーズ

ユーザーの声を対話や回答として得るインタビューやアンケートでは、本音が語られないことが往々にあります。下図のように、いわゆるユーザーの声は表面的な部分であり、その下には裏に隠れている潜在的なニーズが存在します。

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インタビューやアンケートなどのユーザーの態度を測る手法とは対極に、ユーザーのありのままの行動を観察するフィールド調査の手法があります。フィールド調査にも様々な手法がありますが、共通するのはユーザーのコンテキストにそのまま入り込むことです。そうすることで、ユーザーの声からは得られなかった、潜在的なニーズをつかむヒントになるインサイトに気づくことがあります。

ただこのようなフィールド調査は有効な一方で、ユーザーと同じ時間をそのまま共有することもあり、時間的なコストも必然的に高いという欠点もあります。また、フィールド調査で現れるのはユーザーの行動そのものであり、「なぜその行動をしているか?」の答えはあくまで推測でしかありません。(勿論、なぜ?が明らかな場合もありますが。)

フィールド調査の現代版SaaS

Kaizen Platformのプロダクトチームで欠かせないものになっているツールに FullStory があります。これはユーザーの行動を記録して、操作状況の画面をそっくりそのまま再現してくれます。

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私はこれが現代版のフィールド調査に近いと思っていて、そこまでコストがかからずに手軽にユーザーの行動を把握することができます。

FullStoryは複数のユーザーがある特定のパターンで行動しているなど、特徴的な行動が簡単に切り出せる便利なツールですが、フィールド調査の手法と同じように、ユーザーが「なぜその行動しているか?」の答えはあくまで推測でしかなく、すなわちこのツールだけでは答えを得ることが難しいことも多いです。

リーンに様々な手法を併用して答えに近づいていく

ユーザーリサーチには様々な手法やツールがありますが、一つの方法だけにこだわっていては潜在的なニーズを掘り出すのはやはり難しいです。アンケートやインタビューなどユーザーの声を得る手法と共に、フィールド調査のようなユーザーの行動をありのままの姿で把握する手法、両方を併用して行ったり来たりすることで答えに近づいていきます。IDEOではHybrid Insightsという定性・定量の両観点でインサイトを絞っていく思想があったり、どちらも一方では片手落ちになってしまうので相互補完し合うというのが良いそうです。

Kaizen Platformでは、上記のFullStoryに加えてインタビューやアンケートなどを併用して、潜在的なニーズを探っています。例えば、FullStoryで見られた特定の行動について何かしらの仮説を立て、それを深掘るためのインタビューを実施し仮説が合ってるかどうかを検証します。さらにアンケートで一定数の裏付けを得ることで、仮説をより強固にしていきます。

スタートアップは基本的にやることが沢山あるので、ユーザーリサーチに潤沢な時間を使えるわけではありません。そんな中で、ユーザーリサーチの手法の全容を把握しつつ、自身の目的にあったやり方を様々な手法の中から取捨選択して、かつリーンに実行していくことが大切だと思います。

参考

ユーザーリサーチの全体像は、ユーザーエクスペリエンス調査、どの手法をいつ使うべきかで紹介されている図が参考になります。

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