エンジニア小咄の運用例 - 低温調理について

Kaizen Platform でプロダクトマネージャーをしている渡辺です。今回は以前このブログで紹介した「エンジニア小咄(from: リモートワークと心理的安全性と雑談、あるいは小咄 (こばなし) の話)」の運用編ということで、先日発表して好評だった「低温調理」の話を紹介したいと思います。 Kaizen Platform には新しもの好きな人が多く、最新の調理家電や IoT機器などはウケの良い話題の1つになっています。

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エンジニア小咄の運用

私は小咄の当番になると毎回、簡単なスライドを作るようにしています。小咄のそもそもの趣旨は「雑談」なので、本当はスライドを準備する必要はなく好きなことを自由に喋るだけでよいのですが、話題によってはイメージを伝えづらかったり、オンラインの聴衆の反応がわかりにくいこともあるので「見せるもの」としてスライドを用意しています。

スライドを見せながら話す方法には他にもメリットがあります。小咄は各回の当番がフリートークを発信し、他のメンバーは聴衆として聞き役に回るというスタイルですが、スライドを見せながら話すと内容についての質問やツッコミが Zoom のテキストチャットに流れてくることがあります。これを「Youtuber が生放送中に流れてきたコメントを取り上げる」ような形で盛り込むことで、多少インタラクションのあるトークをすることができます。

実際のトークとスライド

ここからは実際に使ったスライドを交えつつ「低温調理のはなし」を紹介していきます。実際の小咄の雰囲気を感じてもらえれば嬉しいです。

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きょうは低温調理の話をしたいと思います。このトピックを選んだ理由なんですが、先日 Slack の雑談チャンネルで 「家庭の低温調理」という本の話が出ていたことがきっかけです。この本はまだ読んでいないのですが、私も昨年低温調理器を購入して、自宅でローストビーフなどを作っています。きょうはそのノウハウや実際にやってみてどうだったか、といったことを紹介していきたいと思います。

www.oreilly.co.jp

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まず「そもそも低温調理ってなんなんだ?」というところから話しますと、いまから30-40年くらい前にフランスでフォアグラを美味しく調理するために編み出された料理法のようです。よく “低温” 調理と言われていますが、もともとは真空調理法 (cuisson sous vide)というらしいです。真空・低温・長時間加熱することで旨味を逃さず調理できるのがこの方法の長所です。

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さて、低温調理で肉を料理するとなると、当然「殺菌は大丈夫なのか?」というのが気になりますよね。これについては厚生労働省がちゃんとガイドラインを出していて、厚生労働省のサイトに行くと「食品別の規格基準について」というページに食品の種類ごとにルールがまとまっています。ここに食肉についてのルールもありまして、詳しくはそちらを読んでもらうとして...一言でいうと、肉類は「中心温度63度で30分間加熱」という基準があります。

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では「この63度で30分」という基準がどうやって決まるのかという話なんですが、加熱殺菌の理論に登場する指標としてD値やZ値というものがあります。私は専門家でないので詳しい説明はできないのですが、ざっくり言うとD値とZ値を基準にして、殺菌に必要な温度と時間が決まります。

加熱の温度を上げれば短い時間で殺菌できますが、低い温度では殺菌に長い時間が必要になります。低温調理ではできるだけ低い温度で調理したいのですが、そうなると今度は長い加熱時間が必要になるので、そのバランスをどこにおくか、というのがなかなか難しいところではあります。

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ここからは私が実際にやっている低温調理の方法について紹介します。器具は買う前にいろいろ調べて比較検討したのですが、実績を重視して Anova にしました。スマートフォンのアプリで操作ができるので、外出先から調理をコントロールできるのもメリットの1つです。容器はお湯が入ればなんでもよいので、自宅にあった寸胴鍋を使っています。

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肉は幸いなことに近所で安く買えるので、ローストビーフ用に牛モモのブロックをよく買っています。1kg弱の塊で買うと豚肉より安いです。買ってきた肉は調理前に冷蔵庫から出してしばらく放置します。あらかじめ常温に近づけておいたほうが加熱が順調に進むからです。真空にするためのパックは Ziploc の厚手ののもの(フリーザーバッグ)を使っています。パックの空気抜きはまあ「だいたい抜けたかな」程度でokです。

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鍋に水をはって Anova で余熱し、袋に入れた肉を沈めて調理開始です。だいたいいつもは56度で2.5時間くらい加熱しています。最初の頃は調理のあとで肉に温度計を刺して、中心温度がちゃんと上がっているかを確認していました。温度の下限は調べたところたぶん54度くらいなんですが、時間もかかるしそこまでギリギリを攻める必要もないのでいまはこの温度です。

実際大丈夫か、と言う部分はもう自分で食べてみるしかないです。幸い食中毒になったことはありませんが、「もう大丈夫だろ」と思えるまでは他人に食べさせませんでした。

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低温調理しただけの肉は今ひとつ味がしまらないので、仕上げにフライパンで焼き目をつけています。あと、余った肉汁も捨てないでソース作りに活かすようにしています。最初は調理後すぐ食べていたのですが、何度かやってみて「肉は調理後すぐ切らず、しばらく休ませたほうが良い」という知見を得ました。

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こんな感じで自宅でローストビーフをよく作っています。豚はリスクが高いのでまだやったことないのですが、いずれ試そうかなと思っています。関連トピックとして、最近みつけた面白い本を紹介します。低温調理の本というわけではないのですが、肉好きの人には楽しめる内容だと思います。あと、低温調理の理論について詳しいサイトも1つ紹介します。

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低温調理、おいしいのでみなさんも興味があったら是非やってみてください...と言いたいところですが、やはり食中毒のリスクがないわけではないので、事前に情報を収集し、安全に配慮した形でやることが大事ですよ、と予防線を張りつつ今回は終わりにしたいと思います。ご静聴ありがとうございました。

機材と実践の成果

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